2006年2月1日


 
近 況 雑 感

1.  特許庁は、意匠法,特許法および商標法の一部改正法を今国会に提出すべく“報告書案”を昨年12月に相次いで発表し、国民からパブリックコメントを募集し、意匠法は1月20日に、特許法と商標法は1月27日に〆切りました。これに対しまして、私は、意匠法と特許法について意見書を提出したので、本号において「第1論文コーナー」に、まず特許法について意見書の内容を掲載します。→第1 25
 意匠法については、都合があり、来月号に開示することにします。
 しかし、特許庁はすでに法案作りに入っていますから、今回のパブリックコメントの募集も形式的な行事であったということになります。
 すると、本格的な議論の場は、国会の“産業経済委員会”となります。私は前回の意匠法改正時には、国会議員を通していろいろな問題について質問してもらっており、法文の解釈について重要な答弁を得ているものもあります。

 

2.  1月1日号の「第1論文コーナー」24で、私は「職務発明の対価について−弁理士の“クレーム力”を評価せよ」を掲載しましたが、この論稿はNBLに発表したものの倍近くの長さのものでした。この中で私は、静岡大学教授の今井哲二先生が朝日新聞2005年1月22日の「私の視点」で、わが国の「青色LED」開発の歴史を全部承知している科学者の公平な立場から発言されていた意見に敬意を表する意味で引用していましたところ、これをご覧になられた同先生から1月30日朝にメールをいただきました。
 同先生は、学会としては中村修二氏への評価は厳しいものがあるようだと言われています。また、同先生のHPなども参照しましたが、「青色LED」の研究開発者(発明者)は赤崎勇名古屋大学名誉教授であり、中村修二氏は工業化に成功しただけという立場であることがわかりました。この両名は同じ研究成果によって、2002年の武田賞(タケダ理研工業の創業者武田郁夫氏が創設した賞)を受賞したのでした。今井先生は「こぼれ話」として、「2〜3年後には、酸化亜鉛(ZnO)を用いた極めて安価な青色LEDが、InGaN系の座を奪う可能性が大きいという。そのとき脚光を浴びるのは、果して誰であろうか。」と言われています。
 今井先生の批判は、「発明力」と同時に特許権を確立した弁理士の「クレーム力」を評価せよと、裁判所に対してのみならず発明者に対してもアピールしている私の思いと相通ずるところがあります。ありがとうございました。

 

3.  今月の裁判例コーナーには、次の3つの事件を取り上げます。
 (1)国際自由学園事件(知財高判平成17年12月27日)
    →G−43(商標登録無効審決取消)
 (2)ブラジャー事件(大阪地判平成17年9月8日)
    →C1−29(不競法・商品形態)
 (3)虚偽告知流布事件(大阪地判平成17年9月26日)
    →C2−9(不競法・その他)


4.  裁判所の判決理由の書き方は、裁判長の指揮によって様々な態様があるところ、知財関係では、高裁において地裁判決とその理由に殆ど変わりない場合、地裁判決の何ページから何ページまでを“引用”するという手法をとることが目立っています。
 ところが、朝日新聞1月20日朝刊33ページによると、最高裁が、高裁の引用判決に対して、「つぎはぎ的な引用」は避けるべきだと苦言を呈したという記事が出ていました。
 そこで、最高裁が問題とした高裁判決を最高裁のHPで調べますと、高松高裁の「建物収去土地明渡等請求事件」の判決に対するものでした。最高裁の苦言は、この事件で裁判長となった一小廷の泉徳治判事が補足意見として述べているものです(最高平17(オ)48平成18年1月19日一小判)。上告されたこの事件の高裁判決が地裁の判決部分を引用していることから、事実認定に矛盾を起したことになったことを指摘し、そのような判決書の書き方を改め、自己完結型の判決書を書けとアピールしているのです。最高裁判決の主文は、「原判決のうち上告人に関する部分を破棄する。上記部分につき本件を高松高等裁判所に差し戻す。」でした。
 また、民事裁判の判決には異常に簡潔なものもあるらしく、過日、横浜地裁の判事がそのことを最高裁から指摘されたことに対して反発する記事が新聞に掲載されていました。これに対し、知財の地裁判決ではそのようなものはなく、かえって饒舌すぎる判決書も多々あることから、その点については反省の余地があります。要点だけを的確におさえている判決理由であれば、当事者は納得するのですから、傍論などはあえて必要でないと言いたいのです。ただ傍論の中には、当事者(特に原告)に対し、争いの視点を変えてみることを促しているものもありますから、それはヒントとして貴重です。

 

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