2002年12月1日
 


 
近 況 雑 感



 
1. 今年も早足で歩いて来たような気がする時間の流れの中で、あと1か月で終ろうとしています。
  停滞した経済環境の中にあっても、知的財産権の保護をめぐる立法や裁判は賑やかであったし、弁理士制度をめぐる議論も盛んでしたが、将来を見すえた本当に実のある議論になっているのでしょうか。
  そうした中で、内閣官房主導で準備された「知的財産基本法」が去る11月27日参議院本会議における可決で成立しましたが、この新法には具体的な中味はなく、知的財産戦略本部を内閣に設置して、知的財産に関する施策を集中的かつ計画的に推進するという掛け声だけの目的しかもたないような法律になっています。特許庁や文化庁や農水省など既存の行政機関との関係や既存の法律との関係は不明であるし、国の知的財産政策をまとめて行う「知的財産庁」の構想や紛争処理のための「特許著作権裁判所」の構想などについては全く言及していないことも不思議です。
  したがって、今さら何のために、このような新法を成立させて運用しようとしているのかよくわかりません。

2.今回紹介する裁判例は、次の3つです。
 (1)意匠審決取消訴訟の「発光ダイオード」事件・・・B−1−12
 (2)商標権侵害訴訟の「犬の図形」事件・・・F−5
 (3)商標審決取消訴訟の「MOSRITE」無効事件・・・G−18
  このうち、(3)の事案は、G−15「MOSRITE」登録取消事件の審決が高裁において取消された後に請求した事件であり、いろいろと因縁のある事件です。

3.最近、職務発明の報酬請求をめぐる判決が、平成14年9月10日に東京地裁民事第47部からと平成14年11月29日に東京地裁民事第47部からとありましたから、この問題については来年1月号に掲載します。この種の訴訟は、今後も増えることが予想されますが、大発明であることに経済的価値があるのではなく、特許権に対して経済的価値があるのであり、この特許権のもつ「クレーム力」が大きく評価されれば、それだけの利益を権利者は獲得することができるのであり、この「クレーム力」を発揮することができる新しい技術をクレームにまとめるのは弁理士であります。

4.私は、現在、産業構造審議会知的財産政策部会紛争小委員会の報告書に対するパブリックコメンツに応ずべく小論を執筆しています。わが国の「知的財産侵害訴訟のあり方」との関係における審判制度の位置づけについて、日頃の体験と研究とに基づいてまとめようとしていますので、いずれ本ページにおいても披露しようと思います。
  なお、「プロフィール」欄については若干補正しました。

5.EUデザイン法(EU DESIGN REGULATION)が2003年4月1日から施行されるにあたり、すでにEU商標法を施行して登録業務を行っているアリカンテ(スペイン)にあるOHIM庁では、2003年1月1日からデザイン出願の受付けをスタートすることになりました。そして、3月31日までの出願については、4月1日に出願したものと取扱うということです。デザインについては実体審査はありませんし、商標のような異議申立制度もありません。費用は安価です。
また、EUデザイン法の特徴は、物品を特定する必要はなく、デザイン自体を保護することになっています。例えば、マンガ・キャラクターの絵の創作者(著作権者)は、その絵について出願をすることができますから、EU諸国の企業との間でキャラクター・マーチャンダイジングのライセンス契約をする場合には、有利な立場を得ることができます。
OHIM庁に一つの出願でデザイン登録をすれば、全EU加盟15か国に登録デザイン権の効力が及ぶことになります。その保護期間は登録から25年です。
わが国で今年10月1日以降に出願した意匠は、優先権を主張することができます。また、すでに公開して新規性を失った意匠でも、1年間の救済期間がありますから、ご検討下さい。
EUデザイン登録に関心のお持ちの方は、当所までe-mail又はFAXにてお問合せ下さい。詳細についてお知らせします。
(2002年12月10日追加分)

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