2002年11月1日
 


 
近 況 雑 感



 
1. 「青色発光ダイオード」の特許第2628404号の特許権の帰属をめぐる東京地裁の中間判決が、平成14年9月9日に出ました。これについての私の感想記は、今回、第1−13に掲載しました。これは、「特許ニュース」10月17日号と10月30日号に発表したものを一緒にしたものです。後者は、会社勤めの一サラリーマンがノーベル賞の化学賞を受賞したビックニュースに接し、受賞者の田中耕一氏の人となりが、これまたノーベル賞候補といわれている中村修二氏のそれとあまりにも対照的に見えたので、「研究か対価か」という問題についてジャーナリステック風に書いてみたものです。
しかし、私が弁理士の立場で中村氏に特に言いたいことは、いかに世界的に大きな発明をしたとしても、そしてノーベル賞の対象となり得る発明であったとしても、最終的に特許権を取得しないことには経済的評価は受けられず、対価を受け取ることもできないということです。そして、この特許権を取得する仕事をするのは、会社の特許担当者であり、代理人となる弁理士であり、明細書に「クレーム」を書く弁理士によって、独占的排他権である特許権の範囲は左右され、決定されるということです。
もちろん、審査官から拒絶のアクションがかけられたときには、周囲を公知技術にかこまれた狭い範囲にならざるを得ない場合もありますが、それでもより広い範囲を取得する努力を多くの弁理士はしているのです。
そこに弁理士の喜びもありますが、その特許権が経済財となって莫大な商業的利益をあげたとしても、弁理士は特許権者に対して、そこから分け前を支払えなどと主張することはありません。
現在、東京地裁には、発明者から旧勤務会社に対して、職務発明に対する対価についての補償金請求訴訟が何件か起されているようですが、テーマをもって研究開発して発明を完成することを職務としている者は、給与のほかに報奨金の支払いを受けていることは、他の社員との比較では特別待遇となります。
対価が問題となるのは、特許権が確立した後にその独占排他性から会社が得た商業的利益に対する分配ですから、裁判所が何をもって合理的な対価基準と定めるかが見ものです。
しかし、外部から持ち込まれた発明や意匠についての譲渡を受け、特許権や意匠権を取得して大きな商業的利益を会社があげている場合、その発明者や創作者は会社に対して対価の請求をすることができるのでしょうか。そういう場合とのバランスも考える必要があるのではないでしょうか。

2. 今回の裁判例コーナーは、次の4件を取り上げました。
(1) 「バルブ用筐」意匠権侵害請求控訴(東京地裁判決)A−14
(2) 「ダリ」商標登録無効審決取消(東京高裁判決)G−16
(3) 「ゾンボーグ」商標登録無効審決取消事件(東京高裁判決) G−17
(4) 「舞台用美術工芸品」著作権侵害等事件(東京高裁判決)D−33
 このうち、特に(4)の東京高裁判決は、上告不受理の決定によって確定しましたが、著作権の成立のための新しい要件を付加するものとして、注目すべき内容を含んでいます。こんご、わが国の著作権法学界でも話題になると思います。

3.このホームページに掲載されている私の論文,論説には、著作権が与えられていますので、無断複製を禁止します。引用される場合には、必ずこの出所を明記して下さるようお願いします。All Rights Reserved.