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2020年7月1日



 
近 況 雑 感

1.6月6日の産経新聞2面には、「本庶氏、小野薬品提訴へ」との大見出しの記事が出ていました。この問題については、本欄においても以前発表したことがありますが、がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許使用料をめぐり、本庶教授が6月5日、製造販売元の小野薬品工業(株)に約226億円などの支払いを求めて、6月中旬に大阪地裁に提訴するだろうと発表していた事件です。

 「オプジーボ」は、本庶氏らが発見した免疫を抑制するタンパク質「PD−1」の研究成果をもとに、小野薬品が実用化し、両者は共同で特許出願をし、平成18(2006)年に同社が特許権を独占的に使い、本庶氏は対価を得る契約を結んでいたのです。

 一方、小野薬品と米国で「オプジーボ」を販売するブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)は、「オプジーボ」に似た薬を販売する米製薬大手メルクに対して、特許権侵害訴訟を起こしていたのです。そして、2017年、メルク側が約710億円を支払うことなどで和解が成立したので、。本庶氏は、BMSと小野薬品が決めた対価の配分割合を問題視したのです。

 本庶氏側によると、小野薬品は14年9月、本庶氏に訴訟への協力を求めた際、小野薬品とBMSがメルク側から受け取る金額全体の10%を支払うと伝達。しかし、小野薬品は17年8月、本庶氏に支払うのは0・25%だとする旨を通知したのです。そこで、今回求めた約226億円は、本庶氏が主張する小野薬品提示の配分との差額です。

 本庶氏は6月5日京大で記者会見し、「話し合いで解決したかったが、やむなく訴訟を決意した、と述べた。」(以上、同紙記事から)

 

2.さて、以上のような記事に続いて、6月20日の全国各紙は、「本庶氏、小野薬品を提訴」の大見出し記事を掲載していたのです。

 「請求するのは、オプジーボの類似薬「キイトルーダ」を販売する米製薬大手メルクから、小野薬品に支払われた特許使用料の一部に対してです。

 訴状によると、小野薬品などは2014年、メルクに対し特許侵害訴訟を起こした。17年にメルクがキイトルーダの売り上げの一部を支払うことで和解した。小野薬品は、この訴訟に協力してもらう報酬として、メルクから受け取った金額の40%を本庶氏に支払うことを口頭で約束した。

 小野薬品はその後、1%に相当する約5億3600万円を支払うことを通知。本庶氏は、昨年末までに受け取るはずだった金額との差額約226億円の支払いを求めることにしたという。」(読売新聞2020年6月20日29面)のです。

 また、同紙は11面「解説」で詳細に記述しており、本庶さんの意見として「小野薬品を信頼して契約したが、アカデミア(大学)の無知を悪用された」と述べているのです。この記事の中には、知財法に詳しい弁護士や大学教授も登場しています。

 なお、同様の金銭の収受問題は過去においても、ノーベル賞受賞者の中には、2014年の物理学賞の中村修二さん対日亜化学工業(株)との事件、2015年の生理学賞・医学賞の大村智さん対メルク社との事件がありますが、法的内容はやや異なります。

 

3.ところで、山中伸弥氏や本庶佑氏が所属している京都大学に対し、ユニクロ社の柳井正社長は個人財産から100億円を寄付するとのニュースが流れていましたが、すごいことであると思います。このお金は京都大学に寄付され、各科学研究所における今後の研究のために自由に使用できるのであり、感謝されています。(京都新聞2020年6月24日)ただわれわれ第三者には、各研究所において具体的にどのように使用されるのかはわかりません。

 

.同じ特許権等については、これを「無償開放」するという動きもあります。読売新聞によりますと、「84社、特許を無償開放」との見出しで、「88万件 コロナ対策のために使用するのであれば、どうぞ」というのです。

 「無償開放を呼びかけたのは、キャノンなど有志企業の知的財産責任者や大学関係者らです。特許権のほか、実用新案権や意匠権、著作権も対象としていると、経団連の中西宏明会長名で協力を訴えていた。」(読売新聞2020年6月13日11面)というのです。

 この記事によると、特許権のみならず、実用新案権や意匠権や著作権も対象としているようです。

 

5.ところで、わが日本国土内において、昭和20年(1945年)8月15日前に米軍空襲等によって焼土と化した最大の犠牲地は沖縄島であったことを、我々日本人はよく承知していますところ、1945年3月末から約3か月に及んだ地上戦では、軍人,軍属を含めた県出身者の12万人以上が犠牲になったといわれています。その沖縄では、6月23日に、戦没者を悼む「慰霊の日」を迎えましたので、糸満市で戦後75周年の追悼式が開かれました。その式典には、日本国憲法改正論者の安倍晋三さんもビデオメッセージで参加していましたが、注目されたのは「平和の詩」を読み上げた首里高校3年の高良朱香音さん(17才)の詩「あなたがあの時」であったのです。私は当日の夜、TVニュースで彼女が暗記した詩を読み上げた姿を目にしましたが、極めてわかり易い表現で発声してたのです。大きな声の裏には、捕虜になるなら自殺した方がいいと思っていた当時の女性の苦しみもあふれていたのです。

「懐中電灯を消してください」/一つ、また一つ光が消えていく

真っ暗になったその場所は/まだ昼間だというのに/あまりにも暗い/少し湿った空気を感じながら/私はあの時を想像する

あなたが青春を奪われたあの時/あなたはもうボロボロ/家族もいない 食べ物もない/ただ真っ暗なこの壕の中で/あなたの見た光は、幻となって消えた。

あなたが声を上げて泣かなかったあの時/あなたの母はあなたを殺さずに済んだ/あなたは生き延びた

あなたが少女に白旗を持たせたあの時/彼女は真っ直ぐに旗を掲げた/少女は助かった

あなたがあの時/あの人を助けてくれたおかげで/私は今 ここにいる」 

               (朝日新聞2020年6月25日夕刊1面)

 

6.1932年に徳島市に生まれ、日本銀行新潟支店に勤務されていた頃、中学1年生の娘の「めぐみさん」(13才)を、新潟市の寄居浜海岸から北朝鮮の工作員によって拉致されて行方不明となった父親の横田滋さんが、6月5日、老衰のため死去されました(87才)。このニュースは、地元の新潟日報では同日の号外で知らされ、6月6日(土)の一面トップで「横田滋さん死去」の大横見出しの記事として掲載されましたが、全国紙では産経新聞もやはりトップ記事として掲載しましたし、スポーツ紙においてもカラー付きの一面トップ記事として掲載されていました。

 以前にも本欄で書いたことがありますが、中学1年生を拉致した寄居浜や彼女が入学していた寄居中学校の近くの西大畑坂上に、私は弁理士若年時代に住んでおり、毎朝坂道を下って東中通りにある父の特許事務所に通勤していたのです。横田滋さん家族が当時住んでいた日銀社宅の場所も承知しています。近くには護国神社が松林の中に建っています。その滋さんは、娘のめぐみさんが無事帰国するのを見ることなく他界されたのです。悲しいことです。老衰とはいえ早すぎます。

 

7.もう1つ、面白いニュースをお知らせいたします。それは、今日の「新型コロナ」旋風に関係する「コロナ CORONA」の商標公報がTVで放映され、この出願代理人として「弁理士牛木一男」の氏名が出ていたのです。その商標公報をここに添付しますが、昭和9年4月24日出願、昭和10年4月25日登録の商標は10年毎の更新を経て、現在も有効に存続しているのです。

 出願人の名義は創業者の内田鐵衛さんですが、この公報に記載されている標章自体は、鐵衛さんが書かれたのではなく、出願を依頼された代理人の牛木一男が書いたもののようです。

 出願代理の依頼のために、内田鐵衛さん自身が三条から長岡の父の事務所にまで来られたと思いますが、当時の事務所は市の中心から離れた自宅のある場所にあり、父が開業したのは進学した東京の大学を卒業してから3年後位であったようです。古川町は私自身の出生地でもあり、昭和20年8月1日夜にB29により長岡空襲を受けて焼失した場所であります。特許事務所は昭和16年4月頃に表町5丁目に移転していました。古川町の名称は、戦後、昭和町と改名されています。

 なお、内田鐵衛さん又は会社はその後、「CORONA」「コロナ」に係る登録商標を多数登録され今日に至っていますが、私自身その昔、鐵衛さんに三条でお会いしたことがあります。

 

 

8.令和2年3月26日付を最後に、地方裁判所や知財高等裁判所による判決言渡しが中止になっていますから、本欄において新しい裁判例を紹介することがやや困難になりましたが、今月の「裁判例研究コーナー」では、次の2件について紹介いたします。

 なお、毎日新聞によると、菓子「八ッ橋」の創業年をめぐる訴訟事件で、「聖護院」に侵害賠償請求を提起していた「井筒」が敗訴したとの判決が出たとことですので、次号では掲載できるかも知れません。

 

(1)登録商標「駿河屋」無効審決取消請求事件:知財高裁令和2年3月11日(4

   部)判決<請求認容/審決取消>➡G−281

(2)出願商標「天地返し仕込」拒絶審決取消請求事件:知財高裁令和2年6月

   4日(3部)判決<請求棄却>➡G−282

 

 

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    牛 木 内 外 特 許 事 務 所
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