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2019年3月1日



 
近 況 雑 感

1.わが国の最高裁判所新判事に、弁護士の草野耕一さん(63才)が就任され、記者会見された中で注目すべき発言がありましたので、法律家の1人として紹介しておきたいと思います。それは、人間としてごく当たり前のことですが、草野さんは、「私に長所があるとすれば、論理的に思考して論理的に表現する能力に比較的長けていることと、人の役に立ちたいという思いが強いこと」から、法律家という職業を選んだとのことです。

 この考え方は、われわれ弁理士という職業人にもすべて通じますから、よく胆に銘じなければならない至言であり、感情に流されたり、自分の利益のためにという仕事をしてはならないのです。

 われわれ代理人弁理士が、職業上取り扱う特許明細書の作成において注意しなければならないことは、特許庁審査官や出願人等に、新しい技術的思想の創作内容を理解してもらうために、「起承転結」から成る最も基本的かつ初歩的な論理学を身につけておかねばならないのです。換言すれば、「発明の目的」・「構成作用」・「効果」・「クレーム」の論法で、明細書を作成することです。

 この明細書作成の論理学は、特に大正10年法時代の特許法では維持されており、侵害訴訟が起こっても、この論理にしたがって、主張,反論,立証をすれば、勝敗が決まったのです。ところが、現行法における近年の特許庁における「基準」をみると、わけのわからないような理由で、明細書の作成要領が発表されているのです。

 また、特許権,意匠権等の差止等請求訴訟において、被告側が主張,立証する特許等無効の抗弁や原告側が反論,立証する「特許請求の範囲」の訂正審判請求の審決を取得しようとする考え方も、法論理学を適用しているから、相互に納得できるのです。

 さらに、弁証法という論理学は、基本原則に対立する考え方が誕生した後に、それを止揚して新しい原則を樹立する論理学であり、それによって矛盾を克服することができるのであります。

 なお、草野先生は、私が承知している主観主義理論を主張する刑事法学者の草野豹一郎先生と関係ある方なのでしょうか。私は知りたいのです。

 

2.戦時中の朝鮮人に対する旧日本企業による徴用工訴訟において、韓国最高裁は、元徴用工や女子勤労挺身隊員らが原告となり、三菱重工業(株)に損害賠償を命令する確定判決を出したことに対し、原告側代理人は、韓国特許庁に登録している同社の特許権に対する差し押さえを近く裁判所に申請する旨を明らかにしたとの記事が、わが国多くの新聞に出ていますが、特許権以外にも差し押さえる産業財産権がないか調べていると、また新日本製鉄住金に対しても同様の訴訟を起こして判決を得ていることから、同様の調査をしているといわれています。

 しかし、韓国において現在の日本企業が有する特許権や商標権や意匠権についての金銭的評価を、誰が何を基準に正式に決定するのか不明ですし、公平な客観的評価などはできるのでしょうか。そして、それらの財産権を何人に売って金銭を取得しようというのでしょうか。

 したがって、このような奇妙奇天烈な裁判は、韓国内で決定してよい問題ではなく、必要ならば、国際裁判所の場において論議したほうが良いと私は思います。

 

3.3月1日に、経産省は、「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。本日、現在開会中の第198回国会(通常国会)に提出される予定です、と発表しました。同省によると、本法律案の趣旨として、「デジタル革命により業種の垣根が崩れ、オープンイノベーションが進む中、中小・ベンチャー企業等が優れた技術を活かして飛躍するチャンスが拡大するとともに、優良な顧客体験が競争力の源泉となってきております。このような変化を踏まえて、特許等の権利によって、紛争が起きても、大切な技術等を十分に守れるよう、産業財産権に関する訴訟制度を改善するとともに、デジタル技術を活用したデザインの保護や、ブランド構築等のため、意匠制度等を強化いたします。」を挙げています。

 その中で、「意匠法の一部改正」案として次の項目が挙げられています。

「(1)保護対象の拡充

 物品に記録・表示されていない画像や、建築物の外観・内装のデザインを、新たに意匠法の保護対象とします。

(2)関連意匠制度※の見直し

※自己の出願した意匠又は自己の登録意匠(本意匠)に類似する意匠の登録を認める制度

・関連意匠の出願可能期間を、本意匠の登録の公表日まで(8か月程度)から、本意匠の出願日から10年以内までに延長します。

・関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認めます。

(3)意匠権の存続期間の変更

 「登録日から20年」から、「出願日から25年」に変更します。

(4)意匠登録出願手続の簡素化

・複数の意匠の一括出願を認めます。

・物品の名称を柔軟に記載できることとするため、物品の区分を廃止します。

(5)間接侵害※規定の拡充

※侵害を誘発する蓋然性が極めて高い予備的・幇助的行為を侵害とみなす制度

 「その物品等がその意匠の実施に用いられることを知っていること」等の主観的要素を規定することにより、取り締まりを回避する目的で侵害品を構成部品に分割して製造・輸入等する行為を取り締まれるようにします。」

 これらの改正項目に対しては、事前のアンケートに私も応募しましたが、特に注目すべき(1)項は、美術の著作物との関係を重複保護と解することになるのか、(3)項は設定登録を停止条件として遡及効を認めて出願中の侵害を肯認するのか、答えを知りたいのです。

 しかし、実務者としての私は、これらの改正点よりも、意匠法3条2項の規定が改正されることになったことに最も注目したいのです。ここには、次のように規定されています。

 「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

 

 すると、この新規定は、私が以前から提言している知財高裁判決例(シール事件 B1−53)の意向を遵守するか、又は法改正をするかが問われている問題の答えが出た、と評することができるのです。これでようやく特許庁も裁判所も、意匠公報等の頒布刊行物に掲載された図面を引用して法3条2項(創作力の有無)の適用を、安心して行うことができるのです。そして、この規定は平成10年当時の最初の改正法案が復活したと言えますから、よかったのです。ということは、今まで法3条2項の適用によって誤って拒絶された多くの出願意匠は、復活する道が全く閉ざされたといえるのです。

 しかしながら、新法施行前であれば、新規出願をすれば、法3条2項の適用なしに登録されるかも知れないのです。

 したがって、私が担当代理をした知財高裁平成30(行ケ)10009号事件及び同平成30(行ケ)10010号事件に対する第4部判決は、現行意匠法3条2項の規定解釈を誤った判決であったことになるから、最高裁においては上告受理の申立て(民訴法318条1項)を受理する決定をすべきであったのです。

 なお、改正法の施行期日は、一部の規定を除き、公布日から起算して1年以内に政令で定める日となっています。

 

4.今月も、わが国の2人の偉人の死去をお知らせしなければなりません。

 1人は堺屋太一さん(83才)、1人は日本国籍人となった米国人で日本文学研究者のドナルド・キーンさん(93才)です。前者は国家公務員時代に大阪万博の開催に貢献され、後者は米国人でコロンビア大学の教授でありましたが、日本文学の研究を長年続けて来られた人物で、川端康成,三島由紀夫,安倍公房らとの交流があった人で、日本に帰化された後に日本人を養子にされた人物です。本宅は東京にありましたが、別宅を新潟県柏崎市に置いていたのです。

 

 

5.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介します。

 

(1)「縫合糸等」特許権侵害損害賠償等請求事件:東京地裁平成30年11月30日

   (民40部)判決<請求棄却>➡E−24

(2)立体商標「ベッド」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成30年11月28日

   (4部)判決<請求棄却>➡G−257

(3)登録商標「ブロマガ BlogMaga」登録取消審決取消請求事件:知

   財高裁平成30年12月20日(3部)判決<請求棄却>➡G−258

(4)立体商標「ランプシェード」商標権侵害差止等請求事件:大阪地裁平成30

   年12月27(民26部)判決<請求認容>➡F−75

 

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