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2020年6月1日



 
近 況 雑 感

1.「素粒子ニュートリノ」のことは、私は個人的に昔から関心を持っているのですが、その一種が別の種類に変身するのを発見したという業績で、京都大学准教授市川温子さん(49才)が、優れた女性科学者に贈られる今年の“猿橋賞”を受けたという記事が朝日新聞の「ひと」欄に写真入りで紹介されていました(朝日新聞5月25日2頁)。素粒子を測定する実験は簡単ではなく、苦闘してデータを積み上げた12年分の研究が成果につながり、ノーベル賞を受けた堀田隆章さんが発見したのはニュートリノが変身するところまでであるところ、変身先を発見したのは市川さんが世界初だというのです。今後は、変身の詳しい様子まで解れば、宇宙ではなぜ反物質が失われ、物質である人間が残ったのかというノーベル賞級の謎に迫れるというのです。研究設備がある茨城県つくば学園都市と京都大学とを、週の半分ずつ6時間かけて通う生活は14年目に入ったというのです。彼女には物理学者の夫(48才)と高校1年の娘がいるというのですから、普通の日本人としての日常生活を送られている人なのです。

 それにしても、真理の発見のために自分の人生を賭ける姿はすばらしいと思います。

 同じ賭けでも、次に挙げる検事はダメな人です。

 

2.安倍晋三内閣総理大臣という人は、現在わが国の行政府のトップに立つ人物であり、彼が政治介入したといわれている一検察官のための定年延長法案が国会に提出されているところ、驚くべきニュースがわれわれ国民の前に飛び込んで来たのです。問題の人とは、正に定年延長法案の提出の動機となっていた東京高等検察庁の黒川弘務検事長が、わが国の今日の緊急事態宣言下において、産経新聞の記者の自宅マンションにおいて、賭けマージャンをしていた事実を「週刊文春」が5月14日号で報道したというニュースです。賭博罪の対象となる「賭けマージャン」というから、1回戦ごとに幾らの現金を払ったり受け取ったりしたかは不明ですが、現実には金銭の授受だけではなく、いろいろな秘密情報などの開示も私事的にはあったのではないでしょうか。

 さらに驚いたことは、4人のうち2人は産経新聞の記者、1人は朝日新聞の記者であったというのです。 両社は互いに相手の新聞記事をたたき合う犬猿の仲であるというのに、現実には仲のいい麻雀仲間であったようです。川柳:「朝産経仲を取り持つ黒川さん」・「犬猿の仲を取り持つ黒川クン」

 新聞記事によると、同じ場所で、4月13日と20日に行い、また5月1日と13日にも行い、他の検事たちがまだ仕事をしているのに、夕方から深夜や翌日未明にかけて、現金を賭けて遊び、飲食も各自が持ち寄っていたというのです。(朝日新聞2020年5月22日26頁)

 「週刊文春」は、過去にもいろいろな事実を暴露して問題になったことのある週刊誌ですが、今回の記事は正に真実であったようであり、現在のわが国の安倍政権の土台にひびが入ったといえる事件になっているのです。

 その結果、黒川さんは正に真実であることを認めて辞職し、同時に森まさこ法務大臣も責任をとって辞任を安倍首相に申し出たというのです。

 このような今回の現役高等検事長のざまを見ると、かつて現役の田中角栄首相をロッキード事件の買収犯として逮捕拘留した東京地検の検事正らは、正に法的正義の道を直進していたと思います。

 賭けマージャンの常習者であれば、刑法186条に規定する「常習賭博罪」という犯罪行為者に該当しますから、逮捕されたり、刑事裁判にかけられ、3年以下の懲役に処されてもおかしくないのです。量刑のいかんは裁判所が判断するのです。

 いずれにせよ黒川さんは法律家で検事という立場を忘れて、刑法上の犯罪行為を実践したことになりますから、厳罰に処せられて然るべきであります。

 そして、今回の犯罪行為の根源を洗浄するためにも、安倍首相は政治的責任をとるべきであり、そうすることは全国民に対する謝罪となると考えなければならないのです。現に安倍さんはTVのマイク前では、「全責任は私にあります。」と明言しているのですから、言行一致の姿勢を早く示せばよいのです。

 

3.私は大学の法学部に入学した動機の一つに、将来検事になりたいとの思いがありました。入学時には未知でありましたが、当時、東京地検に特捜部が設置され、初代の特捜部長に就任されていた河井信太郎さんが講師として在籍されていたことがわかり、4年生になると河井先生の刑法ゼミの講座をとり、教壇に最も近い真ん中の席をとり、口角泡を飛ばしていた講義を拝聴していたのです。河井先生は、わが国の敗戦時には学徒動員で出征した陸軍少尉であったのです。

 しかし、以前にも本欄に書いたことがありますが、私は実体法についてはよく理解できたので自信はありましたが、訴訟などの手続法となると実感がわかないことから、理解することができず、この法分野については自信がありませんでした。したがって、4年時には受験していた司法試験への挑戦は、大学卒業後はあきらめ、弁理士試験への短期決戦に集中したのです。弁理士試験で受験した選択科目は、憲法と民法と刑法の3つの実体法でした。この中で刑法については、社会的正義感の強い性格であった私は、主観主義論者の学説を否定し客観主義論者の学説を強調する考え方を固辞していたのです。

 私は死刑廃止論に反対する者ですが、その理由は私が学生時代に学んだカント哲学にあります。カントの「純粋実践批判」には、人を殺した者は殺されなければならない、という意味の教訓が記述されているのです。換言すれば、人間は平等であるから、相手の立場を考えた上で判断せよというのです。実にわかり易い論理であり、良識といえるものです。検事による被告に対する尋問はこういう人生観から始まるのです。

 ところで、私は幸い大学の卒業年次の弁理士試験に合格し、翌年4月には弁理士登録をして(研修なしに)地方にある父親の特許事務所に就職し実務に就いたのですが、弁理士の最大の仕事は、特許出願のための明細書をうまく作成することを使命とするとともにクレームを抽象的に書くべきことを教えられました。

 この明細書の作成にあっては技術分野は様々であり、法学部出身者には全く未知の世界のものだけでしたが、法学部の学生でも1・2年時の教養科目で学んだ哲学や論理学は、特許の明細書を作成する上でも、事物の本質の究明と、起承転結の論理の展開のために十分役に立っているのです。同時に、特許の分野とは、文と理とのシナジー効果を大いに発揮しかつ止揚する格好の分野であることを教えられたのです。

 したがって、今日の弁理士試験の受験生や合格者には法学部出身者は10%にも満たないことを知ると、将来のわが国の弁理士業界や特許業界を思うと悲観的にならざるを得ないのです。

 この悲劇を解決する方法の一つとしては、現在のわが国における弁理士(Patent Agent)制度を改革し、真の特許弁理士(Patent Attorney)制度に変革しなければならないと思うのです。換言すれば、今の弁理士制度を、真の知的財産権法の知識と知恵とを有する人物像に育成する制度にしなければならないのです。また、商標のみを扱いたい弁理士には商標弁理士(Trademark Agent)という名称の制度にすることです。

 なお、大学のクラスメイトであった永野義一君は、大学卒業後、司法試験に合格した後、検事になり、東京地検の特捜部副部長を経験した後、鹿児島地検の検事正となり、最後は最高検察庁検事で定年退職されました。弁護士となってからは、東京新聞などにエッセイなどを発表していましたし、著書も出版しました。

 私事を付け加えますと、大学時代の恩師吉原隆次先生は昭和35年4月から青山学院大学に新設された法学部の教授となられた機会に、自分の後継者として私に助手にならないかという声をかけられたのです。助手の席は教授室の中にあるからと言われたのですが、私は早く実務をやりたかったことから、断りました。しかし、もし私が承諾してましたら、私の人生は全く変わっていたかも知れません。青山学院大学にはその後、北海道大学から著作権法の半田正夫先生が就任されてましたが、工業所有権法については当分の間吉原先生が教鞭をとられていました。その後、ある期間は菊池武弁護士が講師をされていました。

 私自身は他人を教育するための教鞭をとることはありませんでしたが、これまでに多くの論文等を発表したり、専門書を出版してきましたし、現在もなお判例批評等の執筆を定期的に継続しいます。ということは、実務家の私は、同時に研究者の道を歩むことを人生のモットーとしているのです。そうすることが、与えられた人生の時間を楽しく過ごすことができるからです。人に平等に与えられている時間は一日24時間ですから、それをいかに有効に使うかは各自の勝手なのです。

 

4.外交評論家として有名な岡本行夫さんがコロナ感染の犠牲者となってしまいました(74才)。特許権や意匠権や著作権問題には発展しませんでしたが、国際問題一般については、外務省の北米一課長を歴任されたこともあって、対米問題については多くの発言をされていました。特に橋本龍太郎内閣では沖縄問題担当の首相補佐官を務め、小泉純一郎内閣でも首相補佐官を務め、イラク戦争後の復興の政府支援策の検討に当たっていたし、安倍晋三首相の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」のメンバーでもあったのです。 

            (写真:産経新聞2020年5月9日5頁)

 米国との深い関係といえば、留学していたミッキー吉野や東京外語大卒のタテカワユキヒデらがいましたゴダイゴに在席していたギタリストの浅野孝巳さんが、5月12日に自宅で倒れ死去されました(68才)。

 

(写真:デイリースポーツonline 2019年11月17日)

 

5.最近、奇しくも2人の元新潟県知事の名前が、全国紙の記事に掲載されていました。1人は、加茂市出身の泉田裕彦さん(57才)で、現在は衆議院議員です。彼の名前が登場したのは、朝日新聞の「声」欄であり、野澤重和さん(73才 静岡県)という無職の人が、安倍首相が検察庁法改正案の今国会での成立を断念したことに対し、検察庁や検察総長の定年延長の判断基準を示さない限り、安倍首相が「恣意的人事を行わない」と言われても信じられないから、その根拠を具体的に示せと主張しているのです。

 そして、国会の委員会の人事にはトップの意向が入るのは世の常であり、現に改正法案に異を唱えた泉田さんは衆院内閣委員会の委員を外されたというのです。

 前記改正法案には、役職定年の年齢が過ぎても、幹部ポストにとどまれる特例が盛り込まれていたのであります。

 もう1人の元知事とは、北魚沼郡湯之谷村出身の米山隆一さん(52才)であり、彼は医師でかつ弁護士でもありますが、作家の室井佑月さん(50才)と近く結婚するとの記事が出ていたのです。(産経新聞5月11日20頁)

 衆院内閣委員会のことを紹介しましたが、参院にも内閣委員会があり、現在、その委員長の水落敏栄さん(77才)は新潟県十日町市出身であり、彼は以前は、文科省の副大臣を2年位務めていたのです。

 

6.もう一つ、有名ブランドの著作権問題として新聞が取り上げたものに、東京五輪のエンブレムに対する風刺画(パロディ)があります。 

 それは、日本外国特派員協会(FCCJ)が月刊誌の表紙に掲載した東京大会のエンブレムを新型コロナウイルスに見立てたデザインについてであり、このデザインに対して、東京五輪の大会組織委員会が「著作権侵害」の恐れがあるとして使用の取下げを求めていたのです。

 これに対しては、アイディア上の類似性はあるかも知れないが、著作権法には類似の概念は存在しないし、風刺の意図は明確であり、看者には異なる印象を与える表現であり、翻案といえるようなものでもないから、侵害していないとの解釈はできるのです。しかし、FCCJ会長の判断で、法的な争いに進むべきではないとのことで、協会のウェブサイトから削除したとのことです(朝日新聞5月22日26頁)。

       

 

 

7.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の2件について紹介しますが、今年の4月5月の2か月間は殆どの裁判所においては閉廷状態になり、開廷されることがなかったことから、判決の言い渡しもなかったのです。

 

(1)出願商標「粉雪」拒絶審決取消請求事件:知財高裁令和2年3月11日(4部)

   判決<請求棄却>➡G−279

(2)出願商標「ベジバリア 塩・糖・脂」拒絶審決取消請求事件:知財高裁令和

    2年3月19日(3部)判決<請求認容/審決取消>➡G−280

 

 

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