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2017年6月1日



 
近 況 雑 感

中村稔という弁護士であり弁理士である先生がおられますが、この人はまた詩人としても有名な先生です。

 この中村稔さんの詩を私は昔読んだことがあります。非常に難しく弱輩には理解しにくい内容のものでした。近年は、詩集を刊行されるよりも、文芸評論家として評論集を刊行されていることで知られています。例えば、「宮沢賢治」(現代作家論全集7・五月書房

1958年),「中原中也研究」(ユリイカ 1960年),最近では大冊の「石川啄木論」(青土社 2017年5月)があります。中原中也といえば、「新潮日本文学アルバム」の「中原中也」(新潮社 1958年)によると、晩年は鎌倉市扇ケ谷に住まわれていた関係からか、鎌倉五山の三番目の寿福寺で葬儀されたとあります。中原中也は、文芸評論家の小林秀雄とは公私ともにいろいろな関係を持っていた人です。前記石川啄木論は改訂版ですが、大冊なので、読了するには時間がかかりそうですが、昔愛読した歌人についての評論ですから、気持ちがはずみます。論評は、評論家の年代によって変化するのは当然なことです。

 ところで、文芸評論家という者は、自分自身で詩歌を創作したり、小説を創作した者でなければ、真に他人の作品を批評をすることはできないと心得よと言われていたのは、先の松浦一先生でしたが、英文学者であった松浦先生は歌人ではあっても、小説などを書かれたことはありませんでしたから、英文学者でもあった夏目漱石とはやや違います。

 また、その教えを後年履行したと思われる人は文芸評論家の中村光夫さんでしたが、その昔中村さんが発表した小説を読んだ私は、その内容のつまらなかったことを憶えています。中村さんは、さらに別の小説を執筆されていたようですが、未完のまま死去されました。

 

2.さて、今月24日・25日には2つの類似学会の大会が新潟市と青森市とで開催されます。前者は日本マンガ学会(本部・京都市)、後者は日本アニメーション学会(本部・東京都)です。両学会の会員である私は非常に困っていますが、理事をしている関係もあり、マンガ学会への出席を優先することにしています。今年のマンガ学会の大会の案内書はここに添付しますが、非会員でも会費を支払えば参加することができますから、興味のある方は出席して下さい。会場は大学ではなく市の中心部にある「クロスパルにいがた」という場所であり、ホテルも近くにいろいろあります。(昨年のアニメーション学会は新潟大学でありました。)

 ・日本マンガ学会第17回大会

 ・日本アニメーション学会第19回大会について

 

3.日本マンガ学会にはいろいろな部会がある中で、著作権部会(部会長・大家重夫)では5月18日に一般公開している会合を日本弁理士会館の会議室で開きました。その中の一つに(有)佐藤漫画製作所(佐藤秀峰)から、アマゾンによる「キンドル・アンリミテッド」サービスについての契約違反に対して、民事訴訟を東京地裁に提起しているとのスピーチが、佐藤さん自身からありました。

 佐藤さんが訴訟を提起した理由は、アマゾン社が展開する「Kindle unlimited」という電子書籍の定額読み放題サービスについて、「ある日、同サービスが参加していた弊社及び弊社取次コンテンツが、アマゾン社によって一方的に販売を停止されてしまったからです。これは弊社に限られた事例ではなく、同時期、サービスに参加していた多くの出版社に同様の事態が発生しました。電子書籍コーナーの読者の立場から見れば、ある日、利用していた書店の本棚から大量の本がごっそり消えたことになります。・・・・この出来事によって、弊社を含む各作家、出版社が大きな損害を被ったことはもちろんですが、最も大きな損害を与えられたのは読者の皆さんです。」というメッセージを、佐藤さんはわれわれに報告されました。

 佐藤さんによると、アマゾン社による定額読み放題サービス「Kindle unlimited」は2016年8月3日にスタートし、同社及び取次コンテンツ190冊がこのサービスに参加し、9月1日からは新たに8タイトル16冊のサービス参加申請が受理され、配信待ちの状態であったところ、佐藤社は取次会社を介して、コンテンツをアマゾン社に卸していましたが、同コンテンツは8月3日〜12月31日の期間中は特別条件でロイヤリティを支払うことが約束されていました。

 ところが、8月31日に、取次A社がアマゾン社から「Kindle unlimited」の支払い方式を変更したいとの要望が入り、Kindleコンテンツ事業部長名による書面を示されましたが、その内容は、支払い条件の一方的な不利益変更を求めるもので、同時に条件変更への同意書も提示されましたが、同意しなければ新規コンテンツは配信されず、配信中のコンテンツの一部は近日中に削除される可能性があることを告知されました。これに対し、佐藤社からは一方的な支払い条件の変更には同意できないと返事しましたが、9月1日になると、予定リストにあった作品が一斉に削除されていたので、同社は取次社を通じ、アマゾン社に対し、支払い条件の変更に同意しないこと、正当な理由なく商品の販売の再開を望むことの3点を連絡しました。しかし、その後アマゾン社からは回答はなかったというのです。

 そこで、佐藤さんは今年1月16日に東京地裁(民13部)に、アマゾン社に対する損害賠償請求訴訟を提起したのです。訴訟物の価額は2億0629万3710円です。

 同様に、講談社はアマゾン社に対し、同社による配信の一方的な停止について抗議文を提出していますが、訴訟の提起はまだないようです。

       

.5月11日に発表されたYahoo!ニュースによりますと、「スヌーピー」が400億円で身売りしたという見出しが出ていました。「スヌーピー」や作者のチャールズ・シュルツ等の権利を管理する企業であるアイコニックスブランド社は、ピーナッツワールドワイド社の株式の大半を、カナダ国のDHXメディア社に3億4500万ドル(約394億円)で売却したというのです。

 スヌーピーが登場する漫画「ピーナッツ」の作者チャールズ・M・シュルツは2000年に死去。アイコニックスはシュルツの遺族とともに2010年にJVを設立し、ピーナッツの株式の80%を取得していましたが、今回のDHXメディアへの権利売却後であってもシュルツの遺族は20%の株式を保有し続けることに変わりありません。

 報道によりますと、現在、100か国以上に配信中のスヌーピー等のキャラクターは、年間30000万ドルの利益を生み出しているところ、シュルツは2016年のフォーブスの「死後も稼ぎ続ける著名人」ランキングで、マイケル・ジャクソンに次いで2位につけ、収入は推定4,800万ドルとされていたということです。

 そういえば、私が代理人としてわが国で商標登録をしているジェームス・ディーンやフレッド・アステアのような著名な俳優らは、もう商業的価値のない過去の人になってしまったのでしょうか。

 いずれにせよ、キャラクターの絵やパーソナリティの肖像は、商品化権の対象となるパブリシティ・バリューを有するモノであるといえるのですから、商標法4条1項8号に規定する「他人」とは、生者・死者を問わないと解されるべきです。商標権は財産権である以上、商標登録された死者の肖像・氏名等も財産権として保護されて然るべきなのです。

 

5.「ザ・ベンチャーズ The Venteres」という米国のロックグループをご存知でしょう。毎年夏になると、「夏だ!エレキだ!ベンチャーズだ!」のキャッチフレーズをもって来日し、約3か月間、演奏旅行をしていますが、今年は来日55年記念になるといわれています。しかし、4人のプレーヤーは、昨年から創立当時のメンバーの最後の1人であったドン・ウィルソンが引退してからは、すべて別人による構成になっていますが、楽団名はそのまま残って使われていますし、その演奏曲名も毎年ほぼ同じものです。その点は、初来日がザ・ベンチャーズより約2年遅い「ビートルズ」がそのメンバーの死去などで解散したのとは違い、常に補充した4人のメンバーによって、グループネーミングは消えることなく使用され、多くの日本人ファンを持っています。私も、もちろん中野サンプラザへ9月に行くチケットを買いました。

 

6.JASRACの存在がまた注目をあびた事案は、京都大学の山極総長がことし4月の入学式の式辞で、ノーベル賞のボブ・ディランさんの歌詞の一部を引用したことが同大学のHPに掲載されたことについて、JASRACが確認したところ、それは論評の目的による正当な範囲内における歌詞の「引用」に当たるから、使用料は請求しないとの結論になった、と朝日新聞5月25日33頁は報道しています。人は自説の発表の中で、他人の文言や歌詞などを紹介したり引用したりすることはよくあることですから、この問題の記事は貴重であると思います。

 JASRACはの理事長の席はかつては、文部省の官僚の天下り先となっていましたが、町の音楽教室における教育目的の演奏に対する著作権使用料の徴収を実行しようとしていることが問題になっています。音楽教室は楽器メーカーの営利目的もありますが、別の目的もあるのだから、使用料金は半額にするなどの工夫があってもよいのではないでしょうか。

 したがって、使用料という名目で代理請求する立場にあるJASRACにあっては、著作権者からの委託を受付ける立場にあったとしても、引用か否かの認定のためには、慎重かつ公平に検討することを忘れてはならないのです。(著32条)

 JASRACのことについては、今年3月1日号でもニュースとして紹介しています。

 

7.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の5件について紹介します。

 

(1)「似顔絵」無断投稿・著作権侵害損害賠償等請求事件:東京地裁平成25年

   7月16日(民46部)判決<請求認容>➡D−118

(2)「ゴルフクラブ・シャフトデザイン」著作権侵害差止等請求事件:知財高

   裁平成28年12月21日(2部)判決<請求棄却>➡D−115−1

(3)出願商標「TOMATO SYSTEM」拒絶審決取消請求事件:知財高

   裁平成29年3月23日(2部)判決<請求棄却>➡G−228

(4)登録商標「SCANeR」・「OKTAL」商標権侵害行為差止等請求事

   件:東京地裁平成29年3月28日(民46部)判決<請求棄却>➡F−66

(5)登録商標「医の心」他商標権侵害差止等請求事件:東京地裁平成29年4月

   27日(民47部)判決<請求棄却>➡F−67

 

     

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