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2017年5月1日



 
近 況 雑 感

私はデザイナーでも美大出身でもない弁理士であるにもかかわらず、意匠(デザイン)の法的保護の問題に興味を持った理由には、二つの動機があったように思います。その一つは、旧法(大正10年法)最後の弁理士試験のために、基本書だけではなく、関係する論文を漁っていた中で、意匠法に関して発表された論文は、特許法や商標法に関する論文に比して殆どなく、あっても本質論に及ぶ哲学的に論究したものや著作権法などの周辺法との関係などに触れた論文を見出すことができなかったからです。

 そこで、無体財産法(知的財産法)の実務をしながら研究してみようと思ったのが、意匠法の存在意義を本質から考える哲学的思考から論じた「インダストリアルデザイン―その美と保護の研究」という論文であり、この論文を「パテント」誌の1967年9月号から1968年3月号まで連載したのです。そして、この論文の内容は、正に「その美と保護」の言葉が象徴しているように、意匠法という特殊法学についての基礎研究から入って論じているのであり、私が1974年12月に初版を刊行した「意匠法の研究」の第1編第1章に発表しているのです。この著書は、1978年発行の「著作権事典」(著作権資料協会)の参考文献にも紹介されています。

 そして、前記論文は、私が2005年4月に刊行した論文集「デザイン キャラクター パブリシティの保護」(悠々社)の第1部 デザインの保護、第2「意匠法の存在意義」第1章に転載しているのです。

 この論文集の「はしがき」で私が述べていることは、私はまず実務家であると同時に研究者であることを忘れるなという自覚であり、そのためには存在する物事の意義をよく考えよという認識であり、その本質から保護のあり方を考えるという方法論であります。

 また、私は意匠権や著作権などの侵害訴訟による裁判例については、いろいろな紙誌に発表していますが、例えば日経BP社発行の月刊誌「日経デザイン」には、特に、集中的に連載していました。この雑誌は、その性質上、製品に表現されている美観の保護を著作権法によってするか意匠法によってするかが争点となっている事件が多いところ、法律の違いによってその保護範囲には大きな差異があることも知らされるのです。一番大きい違いは保護の始期と保護期間の差異です。意匠権の場合は、特許庁への書類の出願―審査―登録料金の支払→設定登録日から20年間の存続期間で、登録料を毎年納付しなければならないのに対し、著作権の場合は、著作権の発生と始期は自己主張でよく、その存続期間は作者の生存期間+死後50年間で、著作権の保護期間はきわめて長くても、そのための料金などは不要ということです。

 

2.渡部昇一先生(86才)が4月17日に死去されたとのニュースを新聞で知りました。渡部先生が有名になったのは昭和40年代だったか、「知的生活の方法」という奇妙な題名の本を出版された時でした。私は当時、上智大学の内容やレベルについては何も知らなかったし、渡部先生が英語学の教授であったことも知りませんでした。まして、「知的生活」という新鮮な言葉については、さほどの関心も持っていませんでした。それよりも当時は、学生時代の恩師らから言われていた社会に出たら「よく学べ よく遊べ」を実践していましたから、知的生活なる言葉に矛盾や反発を覚えていましたし、学生時代には「絶対真理より見たる基督教の否定」などという大それた論文を学Y誌に発表していたほどですから、大学教授が書いた本には興味はなかったのです。

 しかし、渡部先生が書いた前記題名の本は、学問としての英語学や英文学や宗教に関係のある内容のものではなく、社会人として健全な日常生活を送るための人生論を説かれていたようでしたから、その内容は時代を超えていたということができるかも知れません。 

 私が前記のような大論文(?)を大学2年時に書いたのは、法学部1年の教養課程の「文学」の中で、英文学(松浦一先生)を選択し、同先生の講義を受けたり、過去の著書を読んだからです。松浦先生が講義で使用していた教科書は、「生命の直路」という題名の著書でしたが、ここにはシェイクスピアやワーズワースの言辞はもちろん、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」も登場していました。松浦先生は「文学の本質」をはじめとする多くの著書を出版されていたし、夏目漱石の後輩で一高,東大でも教鞭をとられていた英文学の教師でしたが、先生からは「あらゆる宗教の宗教」・「あらゆる神の神」という人生論を私は学んだのです。これは、地方出身の若造が東京という大都会で受けたカルチャーショックの一種かも知れませんし、視野を広くすることと、現象を追うのではなくその本質を探究することの重要さを教えられたのです。

 私が前記のような大論文(?)が書けたのも、松浦一先生の教えが根底にあったからであると思います。

 夏目漱石が登場したので、最近見た新聞で知った事実を付記しますと、漱石は東京専門学校(現早稲田大学)でも教鞭をとっていたことを私は知りました。(朝日新聞5月13日27頁)

 最近、NHKラジオの深夜便で聴いたマンガ家の池田理代子さんは、東京教育大学(現在・筑波大学)に入学した時は哲学を勉強したかったということですし、「ベルサイユのバラ」に登場するオスカルのモデルは職業軍人であった祖父であると言われていました。本質を忘れずに展開している彼女のストーリー漫画に人気があるのは、そこに哲学があるからだと思います。

 女性漫画家といえば、2人の徳島市出身者を思い出します。徳島大学を中退して上京した竹宮恵子さんとお茶の水大学を卒業した柴門ふみさんです。2人のマンガ作品の表現は全く異質であっても、その異質の内容にはそれぞれの哲学が流れていることが解るのです。だからこそ、大人でもマンガを読んでみようという気が起こるのです。

 

3.もう一つ、いい情報があります。以前に本欄でも書きましたが、太平洋戦争中に、わが国が米軍の空襲爆撃や艦砲射撃等によって災害を受けて負傷した国民に対する国家賠償法案が、超党派で提出されている今国会で成立するだろうというニュースが、朝日新聞デジタル427日(木)によって発表されていました。議員立法案が目的とする対象者とは、各都道府県が国民の請求に基づいて審査して特別給付金を支給するということになり、財源は国費で充当し、担当は厚生労働省であり、大体1万人が対象者で、国費は最大で計50億円といわれています。

 現在、訴訟中の東京大空襲訴訟では、遺族を含む被害者は1,100万円の国家賠償を求めているといわれますが、前記法案が可決されれば、法律の成立を示唆していた過去の裁判例が生かされることになり、故杉山千佐子さんの願いがようやく叶うことになります。 

       

 

4.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の6件について紹介します。

 

(1)登録商標「」無効審決取消請求事件:知財高裁平成28年4月

   12日(3部)判決<請求認容>➡G−217−1

(2)「ゴルフクラブ・シャフトデザイン」著作権侵害差止等請求事件:東京地

   裁平成28年4月21日(民46部)判決<請求棄却>➡D−115

(3)特許出願「乳癌再発の予防ワクチン」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平

   成29年2月28日(2部)判決<請求認容/審決取消>➡I.1−11

(4)「ウェブページ」著作権侵害等損害賠償請求事件:大阪地裁平成29年3月

   21日(21民部)判決<一部認容>➡D−116

(5)「ふるや紙」文字・図形デザイン著作権侵害損害賠償請求事件:東京地裁

   平成29年3月23日(民46部)判決<請求棄却>➡D−117

(6)商標権侵害の虚偽事実の告知・流布不正競争防止法事件:東京地裁平成29

   年3月30日(民47部)判決<請求棄却>➡C2−35

 

 この中の(1)事件の判決については、すでにG−217で紹介しましたが、今回「特許ニュース」No.14431に掲載するに当たり論評を深めましたので、再掲載することにしました。 

     

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