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2019年2月1日



 
近 況 雑 感

1.以前、憲法第9条をめぐり、故佐藤功先生のことを紹介したことがありますが、最近の朝日新聞「声」欄に「憲法学者は普天間の危険性問え」と題した一市民(中村孝太郎,無職,北海道 65才)の声が投稿されていました。これによると、沖縄の辺野古埋め立てに対し、131人の憲法学者が、「工事の強行は、基本的人権の尊重,平和主義,民主主義,地方自治という日本国憲法の重要な原理を侵害,空洞化するもの」と批判したことに対して、「辺野古に移転する米軍普天間基地の問題解決策については、『即時返還を求めれば良い』と、現実的ではない一言で済ませるのみで、基地周辺住民の人権を等閑視していないか。とても憲法学者の見解とは思えない」という意見です。

 そして、「普天間移設を後回しにしているかのような県の行動に対し、憲法学者なら先 頭に立って人権無視だと弾劾すべきだろう。」と批判しています。(以上、朝日新聞2019年1月31日12頁「声」から)

 一般に学者といわれる人々は、事態に対しては第三者の立場であり、当事者ではないから、国民自身が有している基本的人権をはじめとする所有権のあるべき姿については、学者という立場でしか発言することしかできない。そうすると、無体財産である知的財産権の侵害差止め訴訟や審決取消請求訴訟における判決を批判する場合にあっては、特許出願のための明細書や図面を考えて作成したり、出願したりする実務経験者の立場で具体的に批判することは困難ですから、そのような学者の意見などは信用することはできません。同様のことは、裁判官についても言えますから、彼らが批評している裁判例についての解説などは、特許権等の侵害事件についての真のテキストには向かないと思います。 

 

2.もう1つ憲法第9条の規定について、「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」を詠んださいたま市の女性(78才)の俳句を、同市が「公民館だより」に掲載しなかったのは違法であるとの判決が、昨年12月に確定したことを受けて、同市は2月1日発行の「公民館だより」に掲載することにしたというのです。この川柳のような俳句は、2014年6月に秀句に選ばれていたのですが、公民館側が掲載を拒否したのでした。地裁判決が出たことによって、同市教育長は同女性に直接謝罪したとのことです。(朝日新聞2月1日25頁より)

 

3.京都市在住の哲学者梅原猛(93才)が1月12日、肺炎のため自宅で死去されました。梅原さんは1925年に仙台市に生まれ、京都大学哲学科を卒業され、立命館大学教授や京都市立芸術大学長などを歴任されましたが、通説を覆す独創的な論は「梅原古代学」と呼ばれ、大きな反響を呼んだ学者であると言われています。梅原さんは、学問の方法をデカルトの「方法序説」によって学び、「学問にはまず疑いがあり、その疑いは通説に対する深い疑いを考えた末、直観的に一つの仮説を思いつく。」そして、「すべてを疑い、権威に対して戦うことが哲学者の任務」と公言していたのです。

 梅原さんは、歴史,宗教,文学,美術などの領域を超えた視野の広さは、専門化した学者が目立つわが国では貴重な存在であり、劇作家としても才能を発揮し、三代目市川猿之助と生みだしたスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」、大蔵流狂言の二世茂山千之丞との「王様と恐竜」などのスーパー狂言、梅岩玄祥の演出によるスーパー能「世阿弥」などを創作し、話題を呼んだのです。

 また、晩年は「九条の会」の呼びかけ人となったり、また東日本大震災による原発事故を「文明災」と呼んで批判するなど、社会や平和問題について積極的に発言したのです。(朝日新聞1月15日31頁から)これこそ真の哲学者である、と私は呼びたいのです。

         

 

4.内閣府知的財産戦略推進事務局は、「知的財産推進計画2019」の策定について、意見募集を2月15日までしているところ、私は、著作権侵害となるか否かが長年裁判所で争われてきた「タイプフェイス(type face)(印刷用文字書体)」の法的保護を実現すべく立法化を促進したいとの意見を提出しようと考えています。

 これは、著作権法と意匠法とにまたがる分野の作品保護のあり方を問うことになりますが、その可能性について、私は2つの保護方法をすでに提言しています。1つは現行法の改正なしでも「幼児用椅子」(TRIP TRAP)事件の裁判例を引用し、TFを応用美術品と理解して美術の著作物の一種として現行著作権法でも保護できることを強調すること、または意匠法を改正し、「組物の意匠」(法8条)の一種として、同法施行規則に「物品に準ずるもの」として、「文字の書体」について追加することです。

 

 

5.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の6件について紹介します。

 

(1)登録商標「ハイパット HIPAT」無効審決取消請求事件:知財高裁

   平成30年10月10日(4部)判決<請求棄却>➡G−254

(2)登録商標「ハイパット HIPAT」無効審決取消請求事件:知財高裁

   平成30年10月10日(4部)判決<請求棄却>➡G−255

(3)登録意匠「ごみ箱等」意匠権侵害等差止等請求事件:大阪地裁平成30年

   10月18日(26民部)判決<請求一部認容>➡A−71

(4)「出版権」著作権侵害差止等請求事件:東京地裁平成30年11月15日(民46

   部)判決<請求棄却>➡D−122

(5)新会社設立の不正競争行為差止等請求控訴事件:知財高裁平成30年11月

   22日(3部)判決<控訴棄却>➡C2−42

(6)出願商標「POLO HOME」拒絶審決取消事件:知財高裁平成30年

   12月10日(2部)判決<請求棄却>➡G−256

 

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